内部環境分析の手法~改善につながるヒアリング~

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内部環境分析の手法~改善につながるヒアリング~

前回は内部環境分析の基礎となるポイントを説明しました。今回は実際に改善につなげていくためのヒアリングのポイントについて説明します。

ヒアリングの際に大切にしたい7つのポイント

ここからは私がヒアリングを行う際に意識している7つのポイントをお話します。その前に、前回お話したヒアリングの注意点をもう一度振り返っておきましょう。以下の注意点を押さえた上で、それぞれのポイントを意識してみましょう。

内部環境分析の手法~改善につながるヒアリング~

業務は流れで聞く

業務フローを聞く時などは、時系列に聞いていきましょう。時系列に沿って聞くことで、問題点が人ではなく、プロセスに焦点が当たります。そうすることで、相手の心理的な不安が軽減されて話しやすくなります。いきなり問題点を単刀直入に聞いてはいけません。
聞く際には、頭の中で作業をシミュレーションしながら聞くと具体的なイメージが広がり、問題点を発見しやすくなります。
もし業務が複数の担当者にまたがっている場合は、担当者ごとにそれぞれヒアリングを行います。自分の担当している業務以外はあいまいなことが多いからです。

より具体的に聞く

あいまいな表現は必ず具体的にすることが大切です。特に以下のような表現はそのまま流して聞いてしまってはいけません。

①「すごく」や「大変」などの形容詞

このような言葉(形容詞)はその人の感覚的なものでしかないので、ざっくりでよいので数値化して、自分と感覚を合わせておくことが必要です。

②意味が広すぎる言葉

「○○管理」「○○意識」「○○不十分」「悪い」などの表現は多用されますが、具体的に何を表しているのか不明確な言葉です。このようなアバウトな表現は具体化する必要があります。

③頻度に関する言葉

あいまいな表現は必ず具体的にすることが大切です。特に以下のような表現はそのまま流して聞いてしまってはいけません。「○○が多い」など頻度に関する言葉にも注意です。このような言葉も具体的にしないと的外れな分析になってしまいます。
例えば「ミスが多い」という言葉。このままの表現では「ずっとミスが多い」、「徐々にミスが多くなっている」、「ミスが多い時がある」と3つの意味にとることができます。ここを具体化していないと、相手との間で現状認識が相違してしまいます。頻度を具体的にすることを意識しましょう。

④比較対象が明確でない言葉

「強い・弱い」「良い ・悪い」「早い・遅い」などの言葉は比較対象を明確にすることを意識しましょう。
例えば「製品の品質が良い」という言葉。「品質が良い」というのは相対的なものなので、必ず「何と比較して」そう判断するのかを確認しなくてはいけません。「競合よりも良い」のか「顧客からの評価が良い」のか「以前より良くなっている」のか。何と比較して「良い」と判断したのか、突っ込んで聞くことが必要です。

⑤範囲が不明確な言葉

強み・弱みや問題点などは、「どの範囲なのか?」、「どこまで影響を与えているのか?」を絞り込みましょう。そうしないと的確な改善点が出てきません。
例えば「A商品の魅力がない」と言われたとしましょう。これだけの言葉では範囲を判断できません。「どの地域、どの市場(顧客)での話か」「商品のどの部分か」など範囲を絞り込むヒアリングが必要です。

⑥因果関係が不明確な言葉

「値上げをしたから売上が下がった」などの言葉は、本当に因果関係が成り立つのか確認しながら進めることが大切です。時系列を意識して情報を整理してみると、違う事実が成り立っている可能性もあります(値上げ前から売上が減少傾向だったなど)。
このように、定義があいまいな言葉はきちんと具体化することが大切です。

「ざっくり」から「深く」聞く

ヒアリングで大切なのはまず全体像をとらえることです。まずは全体像をざっくり押さえられるような質問をし、その後で問題のありそうな重要度の高いところを深く聞いていきます。「問題のありそうな重要度の高いところ」はあらかじめ財務分析で目星をつけておきましょう。

見える化

前回もお伝えしましたが、ホワイトボードなどで「見える化」しながらヒアリングをすることで、事実誤認を防ぐことができます。また書きながら上手く整理できないところは、何か問題が潜んでいる可能性があります。
視覚で確認しながらまとめていくことで、プロセスや事実が誤認なく整理できるようになるので、「見える化」は非常に有効な手法です。

関係づくり

一度ですべて聞きたいことが聞き出せるとは限りません。大抵、後から追加で聞きたいことが出てきます。その時に再度聞きに行ける関係を作ることも必要です。
そのためにはヒアリングの相手に過度な負担をかけないよう、気を配ることが大切です。ヒアリングは「会議室」などで、一対一で行うようにし、自由に、安心して話せる環境をつくりましょう。また、当然ですが話を聞かせてくれた相手には敬意を払い、感謝の気持ちを持って接しましょう。時間にも気を付け、相手から質問があれば丁寧に答えましょう。

質問の使い分け

場面や相手に応じて質問の仕方を工夫することも必要です。

①クローズドクエッションとオープンクエッション

「クローズドクエッション」とはYes/Noや2択、3択くらいの選択肢で回答してもらう質問で、「オープンクエッション」とは制約を設けず、自由に回答してもらう質問です。
クローズドクエッションは回答者が即答しやすく、明確な回答を得ることができます。また、まだ相手のことをよく知らない場合は、話の取っ掛かりとして活用することができます。ただ、回答が一言で終わってしまうため話が続かなかったり、強引に2択で答えさせようとしてしまうと、本心とは違う回答をされたりする可能性もあります。
それに対してオープンクエッションとは制約を設けず、自由に回答してもらう質問方法です。会話を広げたり、相手の本音を探りたい時に有効です。ただ、信頼関係ができていない状態だと、本音を話してくれないかもしれません。
相手との関係性や聞き出したい内容によって、使い分けることが必要です。

実行支援

②Problem FocusとSolution Focus

改善は「悪いところを少なくする」と「良いところを多くする」という2つの方法があります。特に人が関わる問題の場合、「なぜ、なぜ」と原因を追究していく(Problem Focus)と、犯人探しになってしまい根本的な問題解決に至らないことも多いです。
そのような場合は、「どうしたら良くなるだろう」という解決志向(Solution Focus)で改善の方向性を探るのがよいでしょう。人はロジックだけでは動きません。納得のいく解決策を協力して探っていく姿勢を見せることで、改善に向けて動いてもらいやすくなります。

定義を聞く

同じ言葉でも会社によって使い方が異なる場合もあります。言葉の定義を確認することも大切です。原価にはどんな費用が入っているのか、利益とはどの段階の利益を指すのか。特に製造業では「不良率」「歩留り率」「稼働率」「故障率」など、さまざまな言葉が使われますが、その言葉の「意味」と「計算方法」は明確にしておかなければなりません。
ヒアリングから改善策を導き出すためには、「事実」を「丁寧」に「深く」確認しないと改善につながる情報は引き出せません。ここまで紹介した7つのポイントを意識してヒアリングを行うと、相手との意思疎通がスムーズになり、効果的なヒアリングができるでしょう。

注意すべきは思考のクセ

ここからはヒアリングの際に陥りやすい「思考のクセ」について説明します。人は意識をしないと自分のパターンに沿って思考を巡らせてしまいます。自分のクセを理解し、安易にパターンに当てはめてしまわないよう注意しましょう。
以下、陥りやすい思考のクセを紹介します。みなさんも自分がこのような思考パターンをしていないか、チェックしてみてください。

1.裏返しの結論のクセ

「商品が売れない」→「がんばって売ろう」
このような考え方は事実の裏返しでしかありません。商品が売れないなら「なぜ売れないのか」「どうしたら売れるのか」「そもそもその商品に市場性がないのではないか」などと考えることが必要なはずですが、安易な精神論に走っています。
やや極端な例かもしれませんが、意識をしないと意外と陥ってしまうクセです。

2.一般解で満足してしまうクセ

「太ってしまった」→「運動しよう」「食べる量を減らそう」という一般解で思考が止まってしまうクセです。このような具体性のない一般解を出しても問題解決にはつながりません。一般解をその会社に適した「特殊解」にまで具体的に落とし込むことが必要です。

3.考える目的を失ってしまうクセ

「分析のための分析」、「整理のための整理」というように、考える目的を見失ってしまうクセです。目的なく分析や整理をしても「それで何が言いたいの?」と言われてしまいます。

4.プロセス重視のクセ

既定のプロセスにこだわりすぎて、効果的な結論が出せないクセです。「顧客のニーズを知りたい」→「顧客アンケートを実施しよう」と安易に考えてしまうことです。仮説なくアンケートを実施しても時間のムダになってしまうかもしれません。

5.主体性を失うクセ

「うちのトップの方針も良くないよね」→「そうですね」などのように、傍観者のようになって主体性を失ってしまうこともあります。自分が主体であることを忘れず、「じゃあどうするか」を考えなくてはいけません。

6.フレームワークに依存してしまうクセ

SWOTやVRIOなどのフレームワークで情報を整理して、何かわかったような気になってしまい、本質が見えなくなるクセです。「なぜ(Why SO)」「だから何なの(So What)」が無ければ役には立ちません。

7.カテゴリー適応のクセ

「A社の業績回復は難しい」→「組立産業だから」というように、勝手に事象をカテゴリーに当てはめて、そのカテゴリーの特性などから安易に結論を出してしまうクセです。2の「一般解で満足するクセ」とも似ていますが、これではそもそも何も考えていないのと同じです。

8.キーワードで思考停止に陥るクセ

「差別化しましょう」
「ブルーオーシャンを狙いましょう」
「優位性のあるビジネスモデルを確立しましょう」
キーワードを使うと、何となく分かったような気になってしまいます。ただ、これらの言葉には全く具体性がありません。差別化なら「どうやって差別化するのか」「そもそもどのような状態になったら差別化したと言えるのか」といった点まで考える必要があります。

9.初期仮説に固執してしまうクセ

初期仮説が必ず正しいとは限りません。仮説は本来、ヒアリングを行う中で検証・進化させていくべきものです。しかし初期仮説に固執してしまうと、ヒアリング内容を無理やり仮説に押し込めたり、仮説に適合する都合のよい事実のみを拾い上げたりしてしまいがちです。
仮説はあくまで仮説。そう考えて、固執してしまうことは避けましょう。
今回は効果的にヒアリングを行うための手法や、注意すべき思考のクセについて解説しました。次回は業務プロセスの分析手法について解説します。