前回は業務プロセスの分析手法と複雑な問題に対処するための構造化のスキルについて解説しました。ここからは組織機能別の評価や分析手法について解説していきます。今回は営業機能について書いてみたいと思います。
営業管理のポイント
営業活動は他の活動と比較して、何が悪いのかを見極めるのが難しいです。その理由として、プロセスが悪くても必ずしも結果が悪くならない点があります。偶然に受注が取れてしまったり、環境要因で売上が増加したり、プロセスが悪くても結果が出てしまうことがあるので、その評価が難しくなります。
また、営業手法などは個人任せになっていることも多く、活動の実態が把握しづらい点も評価を難しくしています。そのような中で、どのようにして営業機能を評価・分析していけばよいのか。ここからポイントを解説します。
営業強化のポイントは、正しい営業プロセスと活動量の増加です。営業プロセスと活動量が結果につながると私は考えています。
では、それをどう管理すればよいのでしょうか。営業機能管理を一覧にしたのが以下の図になります。
図中に記載した管理手法を、ここから詳しく説明していきます。
結果管理
結果管理とは、顧客別・商品別の売上・利益を明確にし、「どこでどれくらい儲かっているか」を把握して、次の営業活動に生かしていくことです。
結果管理で大切なのは、ただ単に「売上・利益が良かった/悪かった」ということを管理するだけでなく、「未来につながる活動に生かすための管理」とすることです。結果をもとに次の打ち手を考えて行動につなげる意識を持つことが大切です。
プロセス管理
プロセス管理とは、営業プロセスを決め、重要なプロセスの活動量を数字で把握し、結果(売上)に現れない活動を管理することです。管理指標としては「訪問頻度」「見積件数」「試作品の依頼件数」などがあげられます。
プロセス管理を評価するポイントとしては、どのような経緯で受注に至っているか、そのプロセス全体が見える化されているかを確認することが必要です。既にプロセス管理を行っている場合は、それを「どのように活用しているか」、「各プロセスの状況を表す数字とアクション(施策)がマッチしているか」、「時系列で分析して未来に手を打っているか」を確認します。
以下の図が営業プロセスと、プロセスごとのアクションおよび管理指標を見える化したものです。
ような営業プロセス全体を、必ずしも1人の営業担当者で担う必要はありません。上図の例でいえば、展示会後のお礼メールなどは総務部門など他の部門に担当してもらってもよいのです。
特に中小企業では、営業担当者の数が少ない場合もあるので、会社全体として営業プロセスを最適化するという考え方で進めた方がよいでしょう。
参考に私が支援していた会社で機械要素展に出展した際の効果を以下にまとめました。
機械要素展に出展した結果、324件の名刺交換で見積り3件、受注1件という結果になりました。この際には以下のような業務基準を作り、これをKPIとして行動してもらいました。
・名刺交換:3日で300枚(100枚×3人)
・お礼メール:月曜日10時までにすべての顧客にお礼メール
・見積り依頼:回答は2週間以内
なんとなく出展するだけになりがちな展示会も、このように受注までのプロセスを設計し、何をどれだけすればよいかを明確にすると、受注にまでつながりやすくなります。
顧客管理
顧客の情報が担当営業マンの頭の手帳や頭の中にだけ収められていることも多々あります。それを共有して蓄積し、組織としての知にしていく。それが顧客管理です。
顧客管理を評価するために以下のポイントに気を付けて見てみましょう。
・顧客の情報を貯める仕組みはあるか?
・どんな顧客情報を集めているか?
・しっかりと運用されているか?
・現場の負荷になっていないか?
顧客管理を継続するには営業マンの負荷が小さくなるような工夫が必要です。例えば以下の図のような「顧客個別管理カード」を作り、訪問先と面談者、商談内容を記録し、顧客別にファイルしていきます。
シンプルですが、継続することができれば、顧客の情報がどんどんと社内に蓄積されていきます。クラウドサービスとスマホを活用して管理してみるのもよいでしょう。
行動管理
行動管理とは営業マンの訪問スケジュール管理です。特に営業の生産性を上げるためには、移動時間の短縮が一番考えるべきポイントです。そのために、週単位で営業マンのスケジュールを立案し効率的な営業活動を行えるようにすることが必要です。
私がよくやってもらうのが以下のような行動計画です。
担当者ごとに訪問予定と実績を記入してもらいます。大切なのは「場所」をきちんと書くことです。場所を記載することで、移動時間の効率化をしっかり考えてもらいます。
ただ、特にこれまで管理をしていなかったような会社では、いきなり複雑な管理をしようとしても、現場の方がついてこられないことも多いです。まずは以下のような丸シールを使った行動実績の管理のような、簡単なところから始めて、徐々にステップアップしていく方が、管理手法の導入が進むこともあります。
モチベーション管理
営業マンのモチベーションを管理することも大切です。営業マンは基本的に孤独です。適切なフォローを行い、モチベーションを上げることができれば、営業の生産性は大きく改善します。
モチベーション管理には決定的な施策はありません。個人の目標を設定してもらったり、定期的な面談を行ったりするなど、試行錯誤しながら進めていくしかありません。
営業マネジメント
営業マネジメントとは営業責任者がどのように部署を運営しているかです。主には、結果管理、仕事の管理、部下の人材育成がどのように行われているかを調査します。
評価の視点としては以下の4つのポイントに注意してみてみましょう。
・営業方針、目標は明確か?
・営業会議で何が行われているか?
(報告のための会議か?先行管理のための会議か?)
・日常のマネジメントはどのように行われているか?
・人材育成はどのように行っているか?
先行管理とは?
ここで「先行管理」という言葉がでてきました。一体「先行管理」とは何でしょうか?
先行管理とは過去や直近のことではなく、先の売上見込みを管理していくことです。
わかりやすいよう、ある会社の営業会議の例で解説していきます。
上が改善前の状態です。この時には8月末の会議で8月の実績の取り纏めをしていました。翌月も同様に同月の取り纏めや結果報告をしている状態。これだとただの成果報告でしかなく、未来の話が何もできていません。
そこで、営業会議を10日前後に行うようにし、そこで9月の見込みを話し合うようにしました。先の売上の状況を早めに確定することができれば、それに向けて様々な対策を打つことができるようになります。
会議で結果報告ばかりしていたのでは、先のことが見えなくなります。とにかく、見込みの売上や利益を見えるようにして、先々を見た営業活動に変えていくことが大切です。
BtoBビジネスの特徴
最後にBtoBのビジネスについて、特徴をまとめておきます。BtoBの企業の場合、営業をするにあたって押さえておかなければならないポイントです。
まとめ
今回は営業管理について見てきました。営業は活動実態がつかみにくく、打ち手と結果がつながらないなど、管理することが難しい部分もあります。
それでも、きちんとプロセスを分析して、「見える化」をし、試行錯誤をしながら仕組みを整えていくことで、少しずつ効果は出てくるはずです。営業支援を行う際の参考にしてもらえればと思います。
次回は購買や外注の管理についてお話します。